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広島高等裁判所岡山支部 昭和47年(ラ)1号 決定

抗告人 横山忍

〈ほか一名〉

主文

原判決を取消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

一、抗告人らの抗告の趣旨および理由

別紙記載のとおりである。

二、当裁判所の判断

(一)  抗告人横山忍の抗告理由について

抗告人は、本件競売期日の通知が利害関係人(債務者)である抗告人になされていない旨主張するが、本件記録によれば、原裁判所は本件競落の基礎となった昭和四六年一二月一七日午前一〇時の競売期日の通知書を同年一一月二四日普通郵便で抗告人の住所に宛てて送付したこと、そして右郵便物は原裁判所に返戻されていないことが認められる。

そうすると、天災事変、郵便物紛失等配達を不能とするような特段の事情がない限り(これを認め得る資料はない)、右競売期日の通知書はその頃(遅くとも競売期日の前日までには)抗告人に到達したものと認めるのが相当であるから、本件競売期日に主張のような手続違背はない。

(二)  抗告人山県檀の抗告理由について

不動産任意競売の競売期日の公告に競売法二九条、民訴法六五八条一号により不動産の表示を要することとしたのは、競売不動産を特定しその同一性を明らかにするとともに、当該不動産の実質的価値を知らせるためであるから、右表示が不動産の現況と多少の相違あるに過ぎない場合は格別、その態様等において著しく異る場合には、単に不動産登記簿上の表示を公告に記載するだけでは足りず、その現況をも併記する必要がある、と解する。

本件記録(特に、鑑定人片岡接夫の鑑定評価書および当審における抗告人提出の資料)によれば、本件競売期日の公告における競売不動産の表示は登記簿の表示のみにしたがって地目を山林と記載されているが、右土地の現況は既に山林でなく、その大半は墓地になっていることが認められる。

そうすると、本件競売不動産の現況(墓地)は登記簿の表示(山林)と著しく相違していることが明らかであるから、その旨を併記せず、単に登記簿上の表示のみを記載してなした本件競売期日の公告は不適法なものといわなければならない。

(三)  結論

よって、抗告人山県檀の抗告は理由があり、原決定(本件競落許可決定)は、競売期日の公告に前示のような違法がある以上、失当たるを免れないから(なお、抗告人横山忍の抗告は理由がないが、右瑕疵により職権で)、これを取消し、本件競落を許さないこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 辻川利正 裁判官 永岡正義 熊谷絢子)

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